#50 ~KINTAN EPISODE~ 1度の食事から広がる物語 

「昨日あなたはなにを食べましたか?」

意外とよくある会話なのですが、年を追うごとに、このよくある会話へ瞬時に応えられなくなるのが、悲しき年の功というもの。

 

けれど、これがお店で食事をした場合だと覚えていることが多いのではないでしょうか。

どこのお店へ食事に行ったことがあるや、どこの店で食事をしたいと思っているのかという記憶は案外消えることがないものですよね。

それはたぶん、日常ではなく非日常であるから覚えているのだと思うわけで、お店での食事というのはそれくらい一つのイベントであって、特別なことなのだと思います。

 

「今度、KINTANの豪華弁当を購入したいと考えています」

 

電話口で話す女性はとても柔和で的確にお話をしてくださる方でした。

簡潔に言えば、KINTANの豪華弁当を今度人との集まりがあるために、20人分ほど購入してみんなでお食事会をしたいのですが、年配の方もいるためお肉は柔らかいもので少々使用を変更したカスタムのお弁当にしたいというお話でした。

 

「ありがとうございます」

私としてはお店を選んでくれた御礼として口をついた言葉でしたが、電話口の女性はその言葉へ素直に呼応してくださりKINTANを選んでくださった理由をお話してくださいました。

 

お電話口の女性がお話してくださったのは、実は女性の旦那さまが亡くなり、葬儀を執り行う際のお弁当を発注したいということでした。

 

KINTANのお弁当を選ばせていただいたのは、主人が最後に口にしたお食事がこちらのお弁当だったからなんですよ」

 

私は驚きつつも、奥さまの言葉へ耳を傾けました。

奥さまは以前にご家族でKINTANのお店でお食事をしたことがあったこと、その後ご病気になった旦那さまを元気づけたいために娘さまがボーナスでKINTANのお弁当を購入し、入院している旦那さまの元へお弁当をお土産として持って行かれたことをお話してくださりました。

その当時お弁当を受け取られた旦那さまは、すでに食欲はなく固形物もあまり食べられない状態とのことでしたが、旦那さまは娘さまから贈られたKINTANの弁当を両手で持ち上げて、一気に口へかきこみ一つ残らず綺麗に平らげ完食したとのことでした、そんな旦那さまの無邪気でお茶目な行動に奥さまも娘さまも思わず大笑いして、家族で笑顔になったとのことでした。

そしてその後、お食事自体をすることはなく旦那さまはお亡くなりになられたと。

そのため、葬儀の際には故人である旦那さまが最後に召し上がったKINTANのお弁当をみんなで思い出話をしながら召し上がりたいと思っているということでした。

とても簡潔で丁寧にお話をしてくださる奥さまは努めて明るくお話をしてくださりました。

最初にいただいたお電話のやり取りの後、メールにてお話はスムーズに進みご予約を承り、お弁当をお届けすることが決定いたしました。

その後、2度目のお電話で連絡をとった際には、ご連絡をくださった奥さまへご家族がご来店をしていただいた店舗などを伺わせていただき、予約を管理するシステムにてお客様の来店履歴を確認させていただきました。

 

2019年9月

恵比寿焼肉kintanにて、『娘さまのお誕生をご家族でお祝い』予約管理システムにはその日の簡単な詳細が残されていました。

私がはじめお話を伺ったニュアンスでは最近のお話のような印象だったため、勝手に近年を想像していたものの、それは本当にこちらの勝手な想像だったのだと改めて思うと。

5年たった今でも娘さまはKINTANでお祝いしたお誕生日を覚えてくださっているということ、そしてそのお弁当を受け取った旦那さまもそれを見た奥さまも、その頃の記憶を「KINTAN」という言葉で思い出すことができるということを感慨深く思いました。

 

2019年と言えば、コロナが猛威を振るう前だったのだとふと思うと、ご家族そろって気兼ねなく外でのお食事でお誕生日をお祝いすることができたのは、この頃がほとんど最後にあたるのではないかと勝手な想像をすると、自然とサービスをする際の気持ちに力が入ることを実感しました。

 

当たり前なのですが、お店を維持し続けるにはお客様の存在が不可欠であり、お客様あってこそのお店でもあるのですが、それに加えて自分たちの仕事への姿勢もまたお客様に支えられているのだと改めて思わされるお話でした。

 

以前読んだ本に「なぜ人は高級店を選ぶのか」と書かれた本がありました。

美食家でもない私はお店というものに対して大きなこだわりもないため、高級店のイメージはいい食材を使って、どこか見栄を張るための場所という偏った考えをもっていました。

私はなにかうんちくでも書かれているのかと気乗りしないままに読み進めましたが、その本へ実際に書かれていたことはいたってシンプルでした。

 

書かれていたのは料理やものの質など、知識のある人が触れてわかることではなく、誰もが思う「大切な人を大切に扱ってもらう」ということでした。

一見シンプルなこの考え方は実際に取り組むのは難しい、特に対お客様は冷たい言い方をすると知らない人という前提が圧倒的に多いためだと思います。

 

料理や空間の演出など、それらを楽しむという目的はもちろん前提で高級店を選ぶ理由には含まれていますが、その本へ書かれていたのは、自分にとって大切な人が知らない人から雑に扱われて嫌な思いさせないために、教育されたプロのサービスマンの心遣いで大切な人を大切な人のだと実感してもらい、守ってもらうこと。

そして、その人が慣れない環境であっても嫌な思いをすることのない時間を過ごすために利用するとのことでした。

 

嫌なことというのは自分の予想の範疇を超えた際に起こる現象だと考えると、勝手の知らない慣れない場所で知らない人と触れ合うというのは、いつもよりも嫌な思いをするというリスクが自然と増えてしまうものだと思います。

 

そんな状況下において、美味しい食事をする際のサービスというのは、思いやりによって人を守るということなのかもしれません。

 

人生の節目において、KINTANを利用してくださっている今回のお客様のことを思うと、この本のことを不意に思い出しました。

 

自分たちが対峙しているその人は誰かの大切な人だということ。

 

今日という日常的な1日が誰かにとっての特別な日だということ。

 

そんな当たり前だけど、見失ってしまうようなそんな基本的な気持ちこそ、大切にしなければならないことだと思いました。

 

お弁当は先日無事にお渡しすることができ、お渡し後、お客様からメールにてご連絡をいただけました。

ご家族でお食事をされる際、KINTANのお弁当のエピソード交えながら、旦那さまのお話で泣き、時には笑いながらお弁当を召し上がっていただけたとのことでした。

ご親族の方もお話を伺ってぜひお店の方へも来店したいと話してくださったとメッセージをいただき、私たちがまたもお客様に支えられているのだと実感し、心ほぐされました。

 

お客様がお客様を繋いでくださり数珠繋ぎしていく、そんな連鎖は自分たちが提供した商品やサービスによって返ってくる

 

そうやって、信頼の和が増えていくということを私はとても素敵だと思いました。

 

「昨日あなたは何を食べましたか?」

その言葉は文字通りの食事だけではなく、その食事をとる生活の中の体験とエピソードが含まれている、だから一人は気軽で楽チン、親しい人との食事は暖かで楽しい。美しいサービスは人を呼び込み、人を安心させる。

 

1日3度はある食事

 

あなたにはどんな物語がありますか。

 

P.S

こちらのエピソードをブログにすることを快くご了承してくださりましたお客様へ。

この度は誠にありがとうございます。

お客様からいただいたお話やお言葉を心にとめて日々努めていければと思います。

 ありがとうございました。

 

KINTAN IN THE HOUSE  中平

 


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